相続は亡くなった人(被相続人)の財産に属した権利義務を全部ひっくるめて引き継ぐことです。
相続財産には土地や建物の不動産、現金や預貯金などの金融資産はもちろんのこと借金やローンなども含まれますから、特に借金などの債務の確認はとても大事です。
相続手続を行うにあたり、どの様な財産が残されているのかがわからなければ遺産分割協議を進めることができません。
また、被相続人が「遺言」を残さなかった場合には、相続財産にどの様なものがあるのか、家族であってもすべてを把握することが難しいケースもあります。
被相続人と同居していない場合や遠く離れて暮らしているため疎遠気味になっている場合、あるいは被相続人と同居していた相続人が財産を隠している場合などは、相続財産がよくわからないということもあり得ます。
相続財産に借金などの負債がある場合は、「限定承認」や「相続放棄」という方法を検討しなければなりません。「限定承認」も「相続放棄」も相続開始後(亡くなった時)から3が月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。
そのためにも、迅速に相続財産を調査する必要があります。
財産調査に必要となるもの
市区町村の役所や銀行等の金融機関で、財産調査を行う場合に一般的に必要とされる書類があります。
ただし、問い合わせ先によっては必要書類が異なる事もありますから、二度手間とならないためにも、前もって確認しておくと良いでしょう。
◎一般的に調査に必要とされる書類
- 被相続人の死亡の記載された戸籍謄本
亡くなっていることが確認できないと問合せに応じません。
- 請求者が相続人であることを証する戸籍謄本
- 調査する相続人の本人確認資料(マイナンバーカード、運転免許証など)
財産調査は相続人であれば一人でもできます。
相続人が複数人いる場合でも、全員の相続関係を証明する必要はなく、調査をする人が相続人のうちの一人であることさえ証明できれば調査はできます。
調査する人が被相続人の「配偶者(妻あるいは夫)」や「子ども」の場合は、調査時の必要書類である「請求者が相続人であることを証する戸籍謄本」は請求者の戸籍謄本で足りる場合がほとんどでしょう。
しかし、調査にあたる人が被相続人の「兄弟姉妹」の場合は、厄介です。
なぜなら、被相続人に「子ども」や「親」がいない場合にのみ、兄弟姉妹は相続人になるためです。
ですから、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集め、子どもがいないことや、既に親も亡くなっていることを証明する必要があり、集める戸籍謄本も多くなり大変手間が掛かります。
相続財産をもれなく調査する
一般的に相続財産のなかで大きな比重を占めるのは、預貯金などの金融資産と土地や建物の不動産です。この金融資産と不動産は遺産分割や相続税に与える影響が大きいので、重点的に調査します。
◎金融資産を調べる
まずは、故人の自宅で現金(タンス預金)、預貯金の通帳、株券などが保管されていないか調べます。
金融機関から送られてくる郵便物などもチェックします。特にネットバンキングを利用していた場合は、パソコン画面での入出金ですから、口座開設時の郵送書類などを見つけ出して預貯金の有無を調べます。
◎不動産を調べる
不動産の取得登記時に発行される「登記済権利証」あるいは「登記識別情報」を探します。また、市区町村の役所から毎年5月頃に送られてくる「固定資産税の納税通知書」でも不動産の所有状況がわかります。
さらには、市区町村の役所で「名寄帳(なよせちょう)」を閲覧して確認することもできます。この「名寄帳」には、その市区町村の管轄内にある「故人が所有する課税不動産の全て」が記載されています。ただしその市区町村の管轄外のものは、当然調査できません。
借金などのマイナス財産
マイナス財産は多くの場合、家族にも知られたくないとの思いが強く故人が隠していることがあります。
借金の契約書、請求書や督促状などがないかを確認します。
銀行、消費者金融、クレジットカード会社からの借金は、それぞれの信用情報機関に情報照会する方法もあります。
友人や知人から借金をしている場合は葬儀の通知をすることでわかることもあります。
被相続人が他人の借金の連帯保証人になっていた場合、相続人は相続することで連帯保証人の地位を引き継ぐことになります。この連帯保証人になっているか、いないかを調べることはとても難しいのですが、連帯保証人への請求は借金をした本人が返済をしない場合に、はじめてされます。
不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)から調べることもできます。不動産に抵当権が設定されていれば借入金があるということですし、また借入先も知ることができます。
単純承認と見なされる場合
「限定承認」や「相続放棄」は、相続の開始(亡くなったこと)を知った時から3ヶ月以内(熟慮期間中)に行わないと、「単純承認」となり相続を承認したものとみなされます。
また、熟慮期間が経過する前であっても、相続財産の処分や隠匿した場合は単純承認したとみなされる場合があります。
相続財産の全容を確認し終える前に安易な相続財産の処分には注意が必要です。