遺贈は第三者に財産を残す方法

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

遺贈は第三者に財産を残す方法 

相続は亡くなった人(被相続人)が有していた財産を引き継ぐことですが、被相続人が遺言を残していない場合は、民法で誰が相続するかが定められています。

 

民法は、相続開始時(被相続人の死亡時)に生存する親族の一定範囲の者に相続する権利があると規定していて、この相続する権利を有する者を「法定相続人」といいます。法定相続人になる者は、「配偶者相続人」と「血族相続人」です。

そして民法が定めている「血族相続人」に該当するのは、「子ども」「直系尊属」「兄弟姉妹」のみです。

 

ですから、例えば夫婦のように暮らしていても内縁関係や「事実婚の相手」、また身の回りの世話や介護をしてくれた「息子の嫁」は、家族といえども法定相続人には、なりません。

 

こうした法定相続人以外の人(「第三者」)に、財産を残したいという場合に使われるのが「遺贈(いぞう)」という制度です。遺贈は「遺言書」によって被相続人が自分の意思を示して、遺贈者(被相続人)から受遺者(じゅいしゃ、財産を受け取る人)に自己の財産の全部または一部を贈与する行為をいいます。

 

「遺贈」が利用される様々なケース

 

内縁関係の相手や子どもの配偶者などは家族であっても、法定相続人ではないので、相続権がありません。また、再婚相手の連れ子なども、養子縁組をしていなければ法律上の親子関係にないので、相続権はありません。

子どもがおらず、甥や姪に財産を残したいと考えても甥や姪も、法定相続人ではありません。

こうした家族や親族でも法定相続人にあたらない人や、お世話になった人(第三者)などにも、遺言書で遺贈することにより遺産を渡すことができるのです。

 

また、相続人がいない人の財産は、遺言を残さなければ、国庫に納められることになります。ですから、自分で財産の処分を指定することは意義があることです。

 

最近では「自らの生きた証として」、「人生最後の社会貢献として」あるいは「感謝の気持ちを伝えるため」として、血縁者以外の人や自分が関係する組織や応援する団体などに財産を遺贈するケースも増えてきています。

 

 

遺贈を巡るトラブル回避策

 

遺言書に遺贈するに至った気持ちや想いを書くことができます。これを「付言事項」といい法的な効力はありませんが、遺族に明確な遺贈の趣旨を伝えることができます。遺贈があることによって、遺族に生じた戸惑いや疑念を減らし、遺産相続におけるトラブルを回避するためにも「付言事項」を書き残すことは大事です。

 

また、法定相続人には相続財産に対して保障されている相続取り分というものがあります。これを「遺留分」といい、民法で遺言によっても遺留分を侵害することができないとされています。相続人と受遺者(遺産をもらった人)との間での相続の争いを避けるために、遺贈する財産は、相続人の遺留分を除いた部分とします。

 

 

遺贈の態様「包括遺贈」と「特定遺贈」

 

遺贈とは、遺言によって特定の人に、被相続人が自己の財産の全部又は一部を与える処分行為のことをいいます。(民法964条)

遺産の全部または何分の一といった割合を指定して財産を与える「包括遺贈」と

特定の財産を与える「特定遺贈」の態様があります。

 

包括遺贈は、例えば内縁の妻に「遺産の半分を与える」のように、与える財産の割合と相手を指定した態様の遺贈です。

包括受遺者(包括遺贈を受ける人)は、相続人と同一の権利義務を有する(民法990条)ため、受遺者は遺贈者(被相続人)の借金なども引き継ぐ可能性があります。

 

包括受遺者は、遺贈の放棄をすることもできますが、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月間(熟慮期間)が期限となります。

また、包括受遺者は遺産分割協議の当事者として遺産分割協議に加わる必要があります。

 

特定遺贈は、「息子の嫁」に「A銀行の預金のうち○○万円を与える」形の遺贈をいいます。

包括受遺者がプラスの財産だけでなく借金などのマイナス財産も引き継ぐのに対し、特定遺贈の受遺者は、遺言で指定されていない限り借金などの相続債務を引き継ぐことはありません。

 

また、特定遺贈の受遺者は、包括受遺者とは異なり、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄をすることができ(民法986条)、受遺者の取り分が明確になっているので、遺産分割協議にも加わる必要はありません。

 

遺贈は、受遺者(遺贈を受ける人)が遺言者である被相続人の死亡時に生存していなければ、遺贈の効力が生じません。(民法994条1項)

 

 

その他の第三者に財産分与する方法

 

①負担付贈与

負担付遺贈は、受遺者に一定の義務を課して財産を与える遺贈の方法です。

負担の内容については、制限はないので様々なものが考えられます。例えば「高齢の親の面倒をみること」、「障害者の息子が生存中はその生活費を負担すること」などです。

 

負担する義務については、受遺者が不利益を負うことのないよう遺贈で与えられる財産の範囲内と決められています。(民法1002条1項)これは、遺贈が遺贈者(被相続人)の一方的な意思表示で与えられる財産であるため、負担が大きければ受遺者にとっては何ら利益とならないためです。

 

受遺者が遺贈を放棄すれば、遺言者が別段の意思表示をしていない限り、負担によって利益を受ける者が自ら受遺者となることができます。(民法1002条2項)

 

負担付遺贈の目的の価格が相続の限定承認や遺留分の減殺請求により減少したときは、その減少割合に応じて負担の義務を免れます。(民法1003条)

受遺者が負担を履行しない場合、相続人は相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に負担の履行がないときは、遺言の取消しを家庭裁判所に求めることができます。(民法1027条)

 

②死因贈与契約

死因贈与は、贈与者(財産を与える者)の死亡によって効力を生ずる贈与契約であり、人の死亡によってその効力が生ずる点は遺贈と同じです。贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定が準用されます。(民法554条)

 

死因贈与は贈与者と受贈者とが合意して結ばれる契約です。できれば後々、受贈者と相続人が争うことがないように、契約書を作成し残しておくと安心です。

なお、贈与と名付けられていますが、「相続税」がかかります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントを残す

*