相続人を確定するための調査

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亡くなった人(被相続人)が残した財産を引き継ぐ相続手続において、相続関係を正確に把握することはとても重要なことです。

被相続人が遺言書を残していない場合は、民法で定められた法定相続人で遺産分割協議を行うことになります。遺言がなければ法定相続人以外の人は遺産を相続できないためです。

この遺産分割協議には相続人が全員で行う必要があります。一人でも欠けていた場合には、その遺産分割協議が無効となってしまいます。そのため相続人を確定する必要があります。

 

被相続人の戸籍調査を行う

相続人の確定のためには、亡くなった人(被相続人)の戸籍調査を必ず行います。

仮に被相続人が過去に離婚をしていた場合など、その前婚のときの子どもがいるとか、あるいは認知している子どもがいるとか、密かに養子縁組をしていたなど、という家族や親族なども知らなかった事実によって、新たな相続人が出現する可能性もあります。

ですから「誰が相続人になるのかを確定するため」に、被相続人の戸籍調査をする必要があります。

戸籍は結婚や転籍、法改正等によって、その都度新たな戸籍が作成されるのですが、その際既に抹消されている事項は基本的に新たな戸籍には記載されません。つまり、改正前の戸籍(改製原戸籍)に記載されていた内容でも、改正後の戸籍に記載されないことがあるのです。

例えば、従前の戸籍(仮にa戸籍とする)には夫婦とその子が記載されていた場合に、子どもが結婚すると従前の戸籍から子どもは除籍され新たに作成された戸籍(b戸籍)に記載されます。

その後、仮に「戸籍の改正」が行われた場合、従前の戸籍(a戸籍)には記載されていた子どもは改製された戸籍(A戸籍)には記載されません。そのため、改製戸籍(A戸籍)からは子どもの存在を確認することができません。

このように、死亡の記載がある戸籍謄本だけや一部の戸籍謄本だけを調べたのでは、相続人の一部が記載されていないことがありますから、すべての相続人を把握することはできないのです。

相続人の確定には被相続人の出生から死亡までの「連続した」戸籍謄本(全部事項証明書)、除籍謄本(除籍全部事項証明書)、改製原戸籍などを集めて調査しなければなりません。この「連続している」ことが大事なポイントです。

戸籍の種類

戸籍は、本籍を定めている市区町村ごとに編製され保管されています。
記載されている内容は、本籍、筆頭者、戸籍に記載されている者の名前、生年月日、父母の氏名及び父母との続柄、出生や婚姻、死亡の身分事項などの情報です。

この戸籍にはいくつかの種類があります。

◎戸籍謄本(全部事項証明書)
戸籍に記載されている内容の写しで、全員分の身分関係の証明書

◎戸籍抄本(個人事項証明書)
戸籍に記載されている内容を抜き出した写しで、個人の身分関係の証明書

◎除籍謄本(除籍全部事項証明書)
戸籍に記載されている全員が死亡や婚姻あるいは転籍等により除かれた戸籍を除籍といい、最終的に戸籍に誰も記載されていない状態になるとその戸籍は閉鎖されます。この除籍の写しで身分関係の証明書を除籍謄本といいます。

◎改製原戸籍謄本
戸籍法の改正に伴い戸籍の様式が変更され、新しい形式の戸籍に作り直すことを「改製」といいます。
この作り直す前の戸籍を「改製原戸籍(かいせいはらこせき・かいせいげんこせき)」と呼んでいます。

昭和の改正で、それ以前の家単位の戸籍(戸主を中心とした、妻、子、父母、孫、兄弟、甥、姪などのその「家」に所属する者を記載している)から、夫婦と子ども単位の現在の戸籍が作られましたが、この改製前の「家単位の戸籍」のことをいいます。

さらに、平成の改正では、コンピューター改製したため、その前の紙戸籍を「平成改製原戸籍」と呼ぶこともあります。

◎附票
戸籍の附票は、戸籍に記載されている人の住所の履歴(戸籍が作られてから現在に至るまでの住所の記録)が記載されている書類で、住民票と違い本籍地の市区町村で戸籍の原本と一緒に保管されているものです。
本籍を置いている期間の全ての住所の履歴が記載されています。

戸籍の構成員すべてが除籍になると「除附票」となります。除附票は5年以上経過すると発行されません。

戸籍の附票が必要となる場合
仮に被相続人が離婚していて、前妻との間にできた子どもがいると、その子は相続人となります。前妻が子どもを引き取り、子どもの現在の居所が分からず連絡が取れない場合などは遺産分割をすすめることができません。こうしたとき、戸籍の附票を取り寄せて調べることができるのです。

◎除籍
子どもが婚姻によって従前の戸籍(親が筆頭者の戸籍)から抜けて夫婦で新しい戸籍をつくる場合を従前の戸籍から「除籍」されるといいますし、死亡した場合に戸籍から抜かれることも「除籍」といいます。

コンピューター化する以前の戸籍では、個人の名前の欄に消除線がひかれ、コンピューター化された戸籍では、個人の身分事項欄に「除籍」と記載されます。

また、従前の本籍地から他の市区町村に本籍を移す「転籍」による場合や戸籍に記載されている全員が結婚や死亡により「除籍」になった場合には、戸籍そのものを「除籍」といいます。

このように「除籍」には「結婚や死亡により構成員が抜けること」と「除籍簿そのもの」の二つの意味があります。

◎転籍
本籍地を他の市区町村へ移すことを「転籍」といいます。

具体的な戸籍をたどる方法

戸籍は、本籍を定めている市区町村ごとに編製され保管されています。
戸籍にはつながりが記載されていますから、戸籍調査では最近のものから順番に古いものへとさかのぼっていき、本籍地ごとの市区町村で請求していきます。

本籍地が不明の時は、現住所のある役所に「住民票に本籍地を記載したもの」を請求することによって本籍地の確認をすることができます。

具体的な戸籍をたどる方法
1. 被相続人の死亡時の本籍地の市区町村の役所で戸籍謄本を請求する。
2. 1で取得した戸籍に記載された内容から一つ前の本籍地を確認し、さらに戸籍謄本を請求する。
3. 被相続人の出生の記載がある戸籍謄本にたどり着くまでこれを繰り返す。
4. こうして相続人の確定をします。

現在の戸籍だけや一部の戸籍だけを見たのでは、相続人の一部が記載されていないことがあるため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が相続関係を証明するためには必要です。

戸籍がつながらない場合がある。
震災や戦災等による戸籍の焼失などにより、戸籍を繋げていくことができず相続関係を特定し証明することができない場合には、その証明が取得できない旨の証明書(廃棄証明書、告知書)を取得します。

戸籍収集のお手伝い

戸籍は個人情報であるため、取得できるのは基本的に親族等の限られた範囲の人だけですが、行政書士は国家資格者として職権で戸籍を取得することができます。戸籍収集は行政書士業務の一環でもあり、個人情報に関する秘密保持義務を負っています。
戸籍収集のため本籍地をたどることは思ったより面倒なことです。婚姻等で転籍などがあると複数の市区町村に請求しなければなりません。

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